この記事は「人の臭いの科学シリーズ」の一部です。
全体はこちら → 人の臭いはなぜ起きるのか|体臭・口臭・室内臭の科学
The chemistry behind periodontal odor — why sulfur gases create such strong smells
人の臭いの中でも、特に強烈だと感じられるものがあります。
- 歯周病の臭い
- ドブの臭い
- 腐った卵の臭い
- 温泉の硫黄臭
これらは一見まったく違う臭いのようですが、実は同じ種類のガスが原因です。
それが硫黄化合物です。
特に歯周病の臭いは、この硫黄ガスによって生まれます。
歯周病の臭いを作る「嫌気性菌」
歯周病は単なる歯ぐきの炎症ではありません。
歯と歯ぐきの間には歯周ポケットと呼ばれる隙間ができます。
この隙間の中は
- 酸素が少ない
- 食べ物の残りがある
- タンパク質が多い
という環境になります。
すると増えるのが嫌気性菌です。
これらの細菌は、タンパク質を分解する過程で硫黄ガスを発生させます。
歯周病臭の主成分
歯周病臭の主な原因物質は次の3つです。
- 硫化水素(H₂S)
- メチルメルカプタン
- ジメチルサルファイド
これらはまとめて
揮発性硫黄化合物(VSC)
と呼ばれます。
どれも非常に強い臭いを持っています。
硫化水素|腐った卵の臭い
硫化水素は、もっとも有名な硫黄ガスです。
特徴は
- 腐った卵の臭い
- 下水臭
- 温泉臭
などです。
わずかな濃度でも臭いを感じます。
人間の鼻は0.0005ppm程度でも検知できます。
メチルメルカプタン|歯周病特有の臭い
歯周病の臭いで特に強いのが
メチルメルカプタン
です。
これは
- 腐った玉ねぎ
- 腐敗したキャベツ
- 強い膿臭
のような臭いを持っています。
しかもこのガスは
- 粘膜を刺激する
- 不快感が強い
という特徴があります。
そのため人は強い嫌悪感を感じます。
なぜ人はこの臭いに敏感なのか
人間の嗅覚は、すべての臭いに同じ感度を持っているわけではありません。
特に敏感なのが
- 腐敗臭
- 硫黄臭
です。
これは進化の過程で
腐った食べ物を避ける
必要があったためです。
腐敗臭は食中毒の危険を知らせる信号だったからです。
なぜタバコと混ざると臭いが強くなるのか
歯周病臭はタバコと混ざるとさらに強く感じられます。
理由は次の通りです。
- タバコは口の中を乾燥させる
- 歯周病菌が増える
- 煙が臭い分子を運ぶ
その結果、臭いは
- 呼気
- 髪
- 衣服
から同時に広がります。
これが強烈な体臭として感じられる原因です。
硫黄臭は生活の中にもある
硫黄ガスは歯周病だけで発生するわけではありません。
実は生活の中にも多く存在します。
- 温泉の硫黄臭
- 下水の臭い
- ドブの臭い
- 腐った食品
これらはすべて同じ硫黄化合物が原因です。
つまり歯周病臭は、化学的には腐敗臭の一種なのです。
臭いは口だけから出ているわけではない
歯周病臭は口の中だけの問題と思われがちです。
しかし実際には
- 呼気
- 唾液
- 口腔内ガス
が空気中に広がり、人の周囲に漂います。
そのため、呼気だけでなく人の周囲の空気が臭うことがあります。
次の疑問
ここで一つの疑問が生まれます。
同じ臭いでも
- 強烈に感じる人
- あまり気にならない人
がいます。
そして何より不思議なのは
本人はほとんど気づいていない
ことです。
これは嗅覚にある脳の仕組みによるものです。
次の記事では、自分の臭いに気づかなくなる嗅覚順応(ノーズブラインド)について解説します。


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