Why odor concentrates around a person — the boundary layer created by body heat
この記事は「人の臭いの科学シリーズ」の一部です。
全体はこちら → 人の臭いはなぜ起きるのか|体臭・口臭・室内臭の科学
人に近づいたとき、次のような経験をしたことはないでしょうか。
- ある距離までは何も感じない
- 一歩近づいた瞬間に急に臭う
- 人が移動すると臭いも移動する
これは偶然ではありません。
人の体の周囲には臭いをためる空気の層ができています。
この現象は空気物理では境界層(boundary layer)と呼ばれます。
臭いは単に呼気から拡散するのではなく、人体周囲の空気の流れによって広がります。
人体は小さな「暖房装置」
人間の体は常に熱を出しています。
成人の場合、安静状態でもおよそ
70〜100W
程度の熱を放出しています。
これは小型の電球と同じくらいの熱量です。
この熱によって、人体の周囲では次の空気の流れが生まれます。
↑ 温められた空気が上昇 ↑ [人] ↓ 周囲の空気が引き寄せられる
つまり人は常にゆっくりした上昇気流をまとっています。
人体の周囲にできる「境界層」
空気の流れは人体に接した部分では急に速度が落ちます。
すると人体の周囲に
ゆっくり動く空気の層
ができます。
これが境界層です。
空気の流れ 速い空気 ──────────── ゆっくりした空気(境界層) ──────────── 人体
この境界層は厚さが数センチから数十センチほどあります。
そしてこの層の中に、次のものが入り込みます。
- 呼気
- 皮膚から出る体臭
- 衣服の臭い
- タバコ臭
結果として、人の周囲には臭いを含んだ空気の層ができます。
人が動くと臭いも動く
境界層の中の空気は、人が移動すると一緒に移動します。
そのため
- 人が通ったあとに臭いが残る
- 人が近づくと臭いが強くなる
- 離れると急に臭わなくなる
という現象が起こります。
これは臭いが人に付いて移動している状態です。
臭いが上に流れる理由
人体の周囲の空気は温められるため、ゆっくり上昇します。
このため臭いは次のように流れます。
↑ ↑ 臭い ↑ [人]
つまり臭いは頭の周囲に集まりやすいのです。
体臭が「顔の高さ」で強く感じられるのは、このためです。
臭いが急に強くなる境界
人の臭いは距離によって大きく変わります。
3m以上 → ほぼ感じない 1m前後 → 体臭 50cm以内 → 呼気臭
この境界を越えると、臭いの強さが急に変わります。
そのため
急に臭った
という印象になります。
湿度が高い場所では臭いが強くなる
湿度が高い場所では、臭い分子は空気中に留まりやすくなります。
特に
- 風呂場
- 脱衣所
- 換気の弱い室内
では臭いが滞留しやすくなります。
そのため、人が短時間いただけでも臭いが残ることがあります。
(☆衣類の臭いも、実は同じ湿気構造で起きるのです。関連記事:)
👉 ジャンパーの脇だけワキガみたいに臭う理由|肌に触れてないのに臭う“湿気トラップ構造
臭いは「呼気だけではない」
体臭というと多くの人は
口臭
を思い浮かべます。
しかし実際には、臭いの多くは
- 皮膚
- 衣服
- 髪
から発生しています。
そしてそれらが人体周囲の境界層に蓄積します。
つまり、臭いは
人の周囲の空気そのもの
に含まれているのです。
次の疑問
では、なぜ特定の臭いは特に強烈に感じるのでしょうか。
たとえば
- 歯周病臭
- 腐敗臭
- ドブ臭
などです。
これらの臭いはすべて硫黄系ガスによって作られます。
そして人間の嗅覚は、この臭いに非常に敏感です。
次の記事では、歯周病臭の正体である腐敗ガスの化学について詳しく解説します。


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