十文字槍の鞘作製と漆仕上げ ― 朴の木と本漆で仕立てる日本刀鞘製作の記録

拵え・塗物・その他

Making a Saya for a Jūmonji Yari — Traditional Lacquer Work with Magnolia Wood

十文字槍の鞘を一から作るという仕事

本日は、十文字槍の鞘(さや)を作製した記録をご紹介します。
刀剣の研ぎや修復をご依頼いただく中で、「鞘まで作れますか?」とご相談を受けることがあります。 実はこのような特殊形状の槍鞘も、対応が可能です。

材料は白鞘と同じ「朴の木」を使用

使用する材料は、日本刀の白鞘と同じく朴(ほお)の木です。
朴の木は、

  • 軽量でありながら十分な強度がある
  • 刃を傷めにくい性質を持つ
  • 加工性が良く、細かな調整が可能

といった理由から、古くより刀剣・槍の鞘材として用いられてきました。

穂先に合わせて組み上げ、形を決めていく

まずは槍の穂先に合わせて、朴の木を割り、組み上げます。
この段階では「まだただの木の塊」ですが、内部寸法の精度がすべてを左右します。

削り出しによるフォルム形成

組み上げた朴材を、少しずつ削りながら形を整えていきます。
十文字槍特有の張り出し部分は、特に力の掛かり方を考慮しながら慎重に成形します。

漆と麻布による下地補強

形が整った後は、本漆・糊・砥の粉を用いて麻布を貼り込んでいきます。
その上から「コクソ」と呼ばれる、漆・砥の粉・水を混ぜた伝統的な下地材を盛り、 強度を確保しながら細部の造形を仕上げていきます。

削りと塗りを繰り返し、仕上げへ

この工程は一度で終わるものではありません。
塗っては削り、また塗っては削る――。
手間は掛かりますが、この積み重ねが最終的な質感と耐久性を決めます。

石目塗りによる最終仕上げ

最終仕上げは、槍の鞘として定番の「石目塗り」。
実際に本漆を用いて、ここまで工程を踏んで仕上げている例は、現在では多くありません。

日本文化財修復保存会としての考え

日本文化財修復保存会は、このような活動を商業的に行っているわけではありません。
可能な限り、御依頼主様のご負担を抑えつつ、
「後世に残せる仕事」を形にすることを大切にしています。

このような御依頼にも対応できます

刀剣の研ぎだけでなく、
・槍鞘の新規作製
・破損した鞘の修復
・古い漆の再仕上げ
なども、ご相談に応じて対応しております。


Afterword / あとがきコラム

Many people believe that lacquer work and saya making are lost arts.
But in reality, these skills still live on — quietly, carefully, in small workshops.

刀剣や槍は、刃だけが文化財なのではありません。
それを守り、納め、使われてきた「外装」もまた、日本の技術と美意識の結晶です。

もし手元の刀や槍に、
「このままでいいのだろうか」
と感じる瞬間があれば、一度立ち止まってみてください。

必要であれば、修復も、新たな拵えも、お手伝いできます。
大切な一振りが、次の世代まで受け継がれる形になるように。

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