これ、何の皮?と思ったあなたへ

白くてゴツゴツした不思議なこの素材。初めて見る人は、だいたい「何だコレ?」と首をかしげます。
正体は――エイの皮。
日本刀の柄巻(つかまき)に使われる伝統素材で、鮫皮(さめがわ)とか梅花皮(かいらぎ)とも呼ばれますが、実は「サメ」ではなく「エイ」。
さらに、黒いツヤのある素材――これは水牛の角。刀の「こいくち」(鞘と柄の接合部)を補強するために使います。
エイ皮が1匹で1つしか取れない理由
エイ皮の中心あたりに大きな粒の集まりがあります。これは王粒(おうつぶ)や親粒と呼ばれる特別な部分で、この出来栄えによってエイ皮の価値が決まります。
- 粒の形が整っているか
- 盛り上がりがあるか
- 傷が無いか
そして1匹のエイから王粒が採れるのは1か所だけ。これを柄の中央に配置することで、刀の品格が大きく変わります。
黒い水牛角で刀の『こいくち』を作る

黒い板状の素材は水牛角です。私は輪郭を描き、糸鋸盤で少しずつ切り出して加工します。


硬い素材なので、切ると独特の焦げた匂いが漂い、工房らしい雰囲気が広がります。
水牛角は鞘の口元の摩耗を防ぐ大切なパーツ。まさに刀を守る“縁の下の力持ち”です。
いよいよ、柄を巻く――伝統技術の本番へ
エイ皮を湿らせて柄木に貼り付け、王粒の位置を慎重に合わせます。
皮の伸び方、粒の並び、のりの量、配置など、細かい要素がすべて柄の仕上がりに直結します。
最後に柄糸を編み込みますが、これは江戸時代から続く難しい技術。やってみて初めて、その奥深さが分かります。
あとがき(私が感じたこと)
刀の柄ひとつ作るだけで、これだけの素材と工程が必要。昔の職人が当たり前のようにこなしてきた技術に、改めて日本文化の凄さを感じます。
自然の素材を最大限生かし、美しさと実用性を両立させる――この感覚は、現代にも通じるものがあります。
English Annotation(for column)
Column: Why Samurai Loved Ray Skin
(コラム:武士がなぜエイ皮を愛したのか)
武士がエイ皮を選んだ理由は “生存率” にあった
エイ皮が重宝された最大の理由は、ズバリ滑らないこと。
汗、血、雨で濡れても滑りにくく、戦場での生存率に直結する大切な素材でした。
さらに武士はエイ皮の粒を縁起物として考え、粒の揃いを「武運が整う」、王粒の立派さを「家運が開ける」と象徴的に捉えていたといわれます。

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