Is Body Odor Genetic? — How the ABCC11 “Body Odor Gene” Works
体臭には遺伝の影響があります。特に、いわゆるワキガ体質については、ABCC11という遺伝子の影響が非常に大きいことが知られています。ただし、ここで誤解してはいけないのは、体臭のすべてが遺伝だけで決まるわけではないということです。
正確に言うなら、遺伝は「臭いの出発点の強さ」に関わります。一方で、実際にどれだけ臭うかは、皮脂、菌、汗、湿度、衣類、生活習慣まで重なって決まります。つまりABCC11は、体臭の全運命を決める神様ではなく、特定のタイプの体臭が出やすいかどうかを左右する強い因子です。
ABCC11が関わるのは主に「ワキの臭い」
ABCC11が特に強く関わるのは、腋の下の臭い、つまりワキガ系の体臭です。これは脇に多いアポクリン汗腺の分泌成分と関係しています。
アポクリン汗腺から出る分泌物は、それ自体が完成した悪臭というわけではありません。そこに含まれる前駆体を、皮膚上の菌が分解することで、独特の強い臭い成分が生まれます。ABCC11は、この臭いの材料をどれだけ分泌しやすいかに関わっています。
つまりワキガとは、汗が臭いのではなく、遺伝子が関わる分泌物の材料と、菌の分解が組み合わさって起きる現象です。
なぜ耳垢でワキガ体質が推測されるのか
ABCC11の話で有名なのが、耳垢との関係です。湿った耳垢の人は、乾いた耳垢の人より、ワキガ体質である可能性が高いとされています。これも偶然ではなく、耳道の分泌と腋の分泌に共通する仕組みの一部にABCC11が関わっているからです。
このため、昔から「耳垢が湿っている人はワキガになりやすい」と言われてきました。これは迷信ではなく、ある程度は生物学的な根拠があります。
ただし、ここで勘違いしてはいけません。湿った耳垢だから必ず強い体臭になるわけでもなく、乾いた耳垢だから完全無臭というわけでもありません。あくまで、脇臭の出やすさの傾向を見る手がかりです。
日本人にワキガが少ないと言われる理由
日本人を含む東アジア系では、ABCC11のうち、ワキ臭が弱くなりやすい型が比較的多いとされています。そのため、欧米系集団と比べると、典型的な強い腋臭が少ない傾向があります。
ただし、これも集団傾向の話であって、個人の運命ではありません。日本人でもワキガ体質の人はいますし、逆にABCC11の影響が弱くても、皮脂臭や加齢臭、蒸れ臭で強く悩む人もいます。
つまり、「日本人は体臭が弱い」という一言で全部を片づけるのは危険です。正しくは、ABCC11が強く関わるタイプの腋臭は少なめだが、体臭全体が消えるわけではない、です。
遺伝で決まることと、遺伝で決まらないこと
ここは非常に大事です。ABCC11は強い因子ですが、それでも決められる範囲には限界があります。
遺伝で決まりやすいこと
- ワキガ系の臭いが出やすいかどうか
- 耳垢が湿るか乾くか
- アポクリン系分泌物の材料が出やすいかどうか
遺伝だけでは決まらないこと
- 実際の臭いの強さ
- 服にどれだけ残るか
- 皮脂臭や加齢臭の強さ
- 汗のこもり方
- 食事や肥満による悪化
- 皮膚常在菌との組み合わせ
つまり遺伝はスタート地点であって、ゴールではありません。遺伝だけを見て絶望するのも、遺伝がないから安心するのも、どちらも早すぎます。
「親がワキガなら自分も必ずワキガ」ではない
遺伝の話になると、親がそうだから自分も確定だ、と考えてしまう人がいます。しかし実際には、遺伝子は組み合わせで受け継がれますし、表れ方にも幅があります。さらに、生活環境が違えば臭いの強さもかなり変わります。
たとえば同じ家系でも、
- 皮脂が多い人
- 汗をかきやすい人
- 肥満傾向の人
- 衣類が蒸れやすい働き方の人
- 食生活が乱れている人
では、臭いの表れ方がまったく違ってきます。したがって、遺伝的素因はあっても、日常でどれだけ前に出るかは別問題です。
生活要因まで含めて見たい方は、体臭は食べ物で変わるのか|脂質組成と皮脂酸化の関係、太っている人はなぜ体臭が強いのか|皮脂量・湿度・菌の関係もあわせて読むと全体像がつながります。
遺伝体質でも対策の余地は十分ある
ABCC11由来の体質があっても、対策が無意味ということはありません。むしろ、仕組みが分かっているぶん、狙う場所が明確です。
- 脇を乾いた状態に保つ
- 衣類に残る臭いを持ち越さない
- 脇毛や蒸れを減らして分解環境を弱める
- 強い香りで隠すより、汗と湿度をコントロールする
- 必要なら医療機関で相談する
ワキガ系の臭いは、皮脂臭や加齢臭とは少し性質が違います。そのため「とにかく洗う」だけでは限界があります。材料の分泌、菌の分解、湿度の管理をまとめて見る方が効率的です。
体臭を理解するには、遺伝だけでなく「出方の種類」を分けることが大事
体臭をひとまとめにすると、話が混乱します。ワキガ系の臭い、皮脂酸化の臭い、加齢臭、蒸れ臭、衣類残りの臭いは、それぞれ主役が違います。ABCC11が強く関わるのはそのうちの一部です。
したがって、「自分は遺伝だから全部どうにもならない」と考えるのはもったいないです。逆に、「ワキガ遺伝子がなければ安心」と考えるのも危険です。必要なのは、自分の臭いがどの型なのか見分けることです。
あとがきコラム|遺伝は“宣告”ではなく“地図”です
遺伝の話は、どうしても重く聞こえます。生まれつき、家系、逃げられないもの。けれど、本来の意味でいえば、遺伝は宣告ではありません。地図です。どこが弱点になりやすいか、どこを先に整えるべきかを教えてくれる情報です。
地図があるなら、むしろ対策はしやすくなります。怖がるべきなのは遺伝そのものではなく、仕組みを知らずに曖昧な不安だけ抱えることなのだと思います。
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