なぜドン・キホーテは真似されないのか|誰も再現できない商売の正体

エッセイ・思索

Why Don Quijote cannot be copied: a business model others fail to reproduce

ドン・キホーテについて書くと、
「でも結局、安い店でしょう?」
「他の会社も同じことをやればいいのでは?」
という疑問が浮かびます。

ところが現実には、ドン・キホーテ型の店はほとんど増えていません
ディスカウント業態は山ほどあるのに、
ドンキ“そのもの”を真似できた会社は見当たらない。

今回は、
なぜドン・キホーテは真似されない(真似できない)のかを、
商売の構造から考えてみます。


理由①「きれいにすると、ドンキではなくなる」

多くの企業は、店舗を作るときにこう考えます。

  • 導線は分かりやすく
  • 商品は整理整頓
  • 在庫は最適化

ところがドン・キホーテは、これを意図的にやらない

通路は狭く、視界はうるさく、
どこに何があるか分かりにくい。

普通の会社がこれをやると、
「管理ができていない店」になります。

ドンキは、
「管理されていないように見せる管理」をしています。
これを中途半端に真似すると、ただの雑な店で終わります。


理由②「仕入れが属人的すぎる」

ドラッグストアや業務スーパーは、
仕入れが極めてシステマチックです。

一方ドン・キホーテは、

  • 過剰在庫
  • 規格外
  • テスト販売
  • 行き場を失った商品

こうした“流通の余り物”を拾い続けています。

これは、
人の目・経験・勘に依存する仕入れです。

マニュアル化しにくく、
AIにも向きにくい。
つまり、大企業が一番苦手な領域です。


理由③「利益構造が分かりにくい」

ドン・キホーテは、
「とにかく安い店」だと思われがちですが、
実はすべてが安いわけではありません

安い商品と、
実はそこそこ利益が乗っている商品が、
同じ棚に混ざっています。

この状態を作るには、

  • どこで利益を取るか
  • どこで客を引きつけるか

を、感覚的に理解している必要があります。

数式だけで管理しようとすると、
ドンキの強さは消えてしまいます。


理由④「現場に裁量を与えすぎている」

ドン・キホーテは、
現場の自由度が異常に高いことで知られています。

棚割り、POP、仕入れ、価格。
かなりの部分を、店や担当者の判断に任せています。

普通の会社がこれをやると、

  • 品質がばらつく
  • ブランドが崩れる
  • クレームが増える

結果、すぐに「統制」が入ります。

ドンキは、
バラつきを前提に、ブランドを成立させている
これが最大の異常性です。


理由⑤「人を選ぶ商売」だから

ドン・キホーテは、
すべての人に好かれる店ではありません。

  • 疲れる
  • うるさい
  • 落ち着かない

そう感じる人も多い。

でも逆に、

  • 楽しい
  • ワクワクする
  • 宝探しみたい

と感じる人も、確実に存在します。

ドンキは、
全員を取りに行かない
だから、強い。


理由⑥「人間の弱さを前提にしている」

多くの小売店は、

  • 合理的に
  • 賢く
  • 計画的に

買い物をする人を想定しています。

ドン・キホーテは違う。

疲れている人、酔っている人、気が緩んでいる人
を前提にしています。

この発想を、
倫理・社内規定・ブランド戦略の壁を越えて、
そのまま実行できる会社は、ほとんどありません。


あとがきコラム|真似できないのは「設計思想」

ドン・キホーテが真似されない理由は、
ノウハウが隠されているからではありません。

やろうと思えば、やり方自体は見えている

それでも真似できないのは、
それを「やり切る覚悟」が、組織にないからだと思います。

混沌を許容する。
現場に任せる。
人の弱さを前提にする。

これは、
数字よりも、人間を信じる商売です。

ドン・キホーテは、
安い店でも、便利な店でもない。
人間そのものを相手にした、異端の小売

だからこそ、
誰も同じ形では真似できないのだと思います。

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