Why Don Quijote is different: a store that sells impulse, not just low prices

ドラッグストアや業務スーパーについて書いていると、
「じゃあドン・キホーテはどうなの?」
と聞かれることがあります。
確かにドン・キホーテも「安い店」に分類されがちです。
ですが、冷静に見てみると、ドン・キホーテはまったく別の商売をしています。
同じように商品を並べ、同じようにレジで精算する。
それなのに、買い物体験はまるで違う。
今回は、その理由を私なりに整理してみます。
ドン・キホーテは「計画購買」を前提にしていない
ドラッグストアや業務スーパーに行くとき、
多くの人は「今日はこれを買う」と決めて店に入ります。
一方、ドン・キホーテはどうでしょう。
- 特に買う物は決めていない
- なんとなく入った
- 時間つぶしのつもりだった
ドン・キホーテは、
「何も決めていない状態の人」を主な客として想定しています。
だから、整然としていない。
だから、通路が狭い。
だから、どこに何があるか分かりにくい。
これは欠点ではなく、意図された設計です。
ドン・キホーテは「滞在時間」を伸ばす店
ドラッグストアや業務スーパーは、
できるだけ早く買い物を終えてもらう方が回転が良くなります。
ドン・キホーテは真逆です。
- 迷わせる
- 立ち止まらせる
- 探させる
人は、店内に長くいるほど、
予定していなかった物を買いやすくなる。
ドン・キホーテは、
この人間の性質を、かなり正直に利用しています。
ドン・キホーテは「価格比較」をさせない
業務スーパーでは、
量・単価・原価を自然と考えます。
ドラッグストアでは、
ポイントや割引を計算します。
ところがドン・キホーテでは、
「これ、安いのか高いのか」を深く考えにくい。
派手なPOP、強い言葉、
元値が分かりにくい表示。
安いかどうかを考える前に、手に取らせる仕組みです。
これは、価格ではなく、
感情に売っているということでもあります。
ドン・キホーテの利益は「薄利多売」ではない
意外かもしれませんが、
ドン・キホーテは必ずしも薄利ではありません。
理由のひとつが、PB(情熱価格)です。
情熱価格の商品は、
価格だけを見ると安く感じますが、
実は利益率をコントロールしやすい。
さらにドン・キホーテは、
- 規格外商品
- 在庫過多の商品
- テスト販売品
- 季節外れ商品
といった、
他の店では扱いにくい商品を拾い上げるのが得意です。
混沌を処理できる柔軟性が、ドン・キホーテの強さです。
なぜ深夜営業が成立するのか
ドン・キホーテは、
深夜や休日に特に力を発揮します。
人は、
- 疲れているとき
- 気が緩んでいるとき
- テンションが上がっているとき
理性的な判断が弱くなります。
ドン・キホーテは、
人間の理性が緩む時間帯に、
最適化された店と言えます。
ドン・キホーテは「生活防衛」の店ではない
ドラッグストアや業務スーパーは、
生活費を抑えるための店です。
ドン・キホーテは、
生活を便利にすることもありますが、
基本的には生活を“乱す”店です。
予定外の出費。
予定外の発見。
予定外の疲労。
それでも人が行ってしまうのは、
買い物そのものが娯楽になっているからでしょう。
あとがきコラム|ドン・キホーテが教えてくれること
ドン・キホーテは、
決して「賢い買い物」をするための店ではありません。
でも、
人間がどれだけ理性より感情で動いているかを、
これほど分かりやすく体験できる店も少ない。
ドラッグストアが「生活の合理性」なら、
業務スーパーが「原価の論理」。
ドン・キホーテは、人間そのものを相手にしています。
そう考えると、
あのごちゃごちゃした店内も、
少し違って見えてくる気がします。


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