第10章 骨董との出会いが文化財修復へ繋がった瞬間

過去の副業図鑑

How Antiques Led Me to Cultural Restoration

骨董にハマったきっかけは「値段のギャップ」だった

骨董が好きになった理由を聞かれると、多くの人は「歴史が好きだから」「古い物が美しいから」と答えるかもしれません。しかし私は正直に言えば、最初の入口はもっと単純でした。

タダ同然で仕入れた物が、信じられない値段になる。

このスリルがたまらなかったのです。
古美術市場では「え?これが?」というような品物が眠っています。地方の市場やネットオークションを覗いてみれば、売り主も価値に気づいていないことが多い。そういう品こそ、最大のチャンスになります。

骨董屋は「目利き商売」とよく言われますが、実際のところ、本当に目が効く人は少ない。だからこそ、少し物知りになるだけで、驚くほど稼げてしまう世界でもあります。

古美術市場は“宝の山”だった

私は毎週のように古美術市場へ通い、さまざまな骨董を手に取りました。驚かれるかもしれませんが、100円や500円で買ったものが、数十万円になったこともあります。

もちろん年に一度あるかないかの「爆当たり」。 しかし、市場に顔を出す回数が増えれば増えるほど、確率は上がります。

田舎の蔵を回って仕入れる方の話では、普段はあまり譲ってくれない家主も多いそうです。ただ、あまり喜ばしい話ではありませんが、大きな自然災害のあとには、思わぬ“大物”が蔵から出ることもたしかにあると言います。

古い物か現代作かは、毎日触れていると自然と分かるようになります。 「物の声が聞こえてくる」というのは大げさではなく、本当にそんな感覚です。

私を修復の世界へ導いた“ある気づき”

あるとき私は市場で、割れた茶碗を金直ししたものが高額で取引されていることに気づきました。しかもオリジナルの破片ではなく、似たような破片を持ってきて繋いだ「呼び継ぎ」の商品です。
これインチキじゃねーか。と思っていましたが、ネットでは高く売れるんですね。

私は普段から発掘品の陶片が売られているのをよく見ていたので、 「この破片は一体何に使うんだろう?」と思っていたのですが、 まさにここにヒントがありました。

茶碗のかけらは“金継ぎ職人の素材”でもあった

気になって調べてみると、金継ぎには技法がたくさんあり、破片同士を呼び継ぐことで新たな価値が生まれることを知りました。

そこで私は決意しました。

「ならば、自分で金継ぎをやってみよう。」

そこから漆の世界に入り込み、技法を学び、陶磁器の構造や歴史背景にのめり込んでゆきました。金継ぎを覚えるうちに、自然と“修復という仕事”が自分の中で形になっていきました。

気づけばその経験が、現在の文化財修復の技量へと繋がっているのです。

骨董は「儲け」以上に人生を変えることがある

骨董は博打ではありません。知識と観察力の積み重ねです。 値段のギャップにワクワクしたあの頃の体験が、今では文化財や刀剣を修復する道へ続いているとは、当時の私は想像もしませんでした。

あなたがもし中古市場や陶片を眺めているとき、 そこには“未来の仕事”に繋がるヒントが落ちているかもしれません。


📷 Photo Caption / 写真キャプション

価値を生むかどうかは、目と知識次第。

あとがき / Afterword

目利きは一朝一夕では育ちませんが、誰でも必ず鍛えられる技術です。

「本物を見続けること」「売れた理由を分析すること」「古い物の作り方を知ること」。この3つを続けるだけで、あなたの“目”は確実に変わります。

骨董の楽しみは、買うことでも売ることでもなく、その“過程”で自分の世界が広がっていくことにあります。もし興味があるのなら、まずは市場を覗いてみてください。予想外の出会いが、あなたの人生の伏線になるかもしれません。

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