『化粧研ぎは施されているが、どうにも面白みがない。
試しに研ぎ直してもらえないだろうか』
そんな御依頼から始まった今回の短刀研ぎ直し。
※【以下の2枚は御依頼時の状態です。】


確かに錆はなく、一見すると“綺麗に研がれている”刀ではありました。
しかしよく見ると、研ぎ肌に深みがなく、地鉄も眠っているような印象。
化粧研ぎにありがちな現象で、表面は整っていても刀の個性が死んでいる。
地肌を覗き込むと、わずかに覗く模様。
「これは化ける」
当修復保存会では、刀が元々持つポテンシャルを最大限に引き出すことを何より大切にしています。
⚒ 研ぎ直し開始──眠っていた地鉄と映りを呼び起こす
今回は軽い化粧直しではなく、地肌をしっかりと出す本格研ぎを採用。
約3日をかけて刃取りまで終わり、姿・表情・陰影を作り直しました。
そしてこちらが研ぎ直し後です。



ご覧いただくと分かる通り、
- 地鉄の立体感・地景の浮き上がり
- 映りの復活
- 透明感のある質感
- 刀身全体の締まりと存在感
が出てきました。
とくに地(じ)の透明感と映りの出方は、単なる化粧研ぎでは絶対に得られないものです。
🗣️ ご依頼主のご感想
『最近の化粧研ぎよりもはるかにこちらが良く、
まるで別の刀のようだ。大変気に入りました。』
とのお言葉をいただきました。
刀剣は「研ぎ次第」で印象が一変します。
同じ刃でも、眠らせる研ぎ・引き出す研ぎがあります。
今回のような研ぎ方は、刀身の状態や地鉄の個性に合わせて
一点ずつ仕立てる必要があります。
その分、手間も時間も掛かりますが、
刀が本来持っていた本当の顔が現れたとき、研ぎ師としてこれほど嬉しい瞬間はありません。
📎 コラム(Column)
※English note: Many antique Japanese blades have hidden metallurgical beauty that can only be revealed through traditional polishing techniques. A “cosmetic polish” often makes the blade look clean but fails to express its true character.
◆化粧研ぎと本研ぎの決定的な違い
最近の化粧研ぎ(型にはまったら戦隊的な見た目重視)
・光沢が強い
・傷が消える
・短期間で仕上がる
・地肌が見えないことが多い
当修復保存会の研ぎ(地肌再生・オリジナルの刃紋を強調)
・地鉄・刃文・映りが立体的に見える
・刀の個性が復活する
・時間と技術が必要
・刀が“語り出す”研ぎ
人に「顔」があるように、刀にも「顔」があります。
魅力を出せるかどうかは研ぎで決まります。

コメント