🍁 依頼品の金直し ― 金継ぎに見えない金継ぎ / Invisible Kintsugi with Maple Design

日本文化財修復保存会

友人から、「気に入っていたカップの口が一か所欠けてしまって困っている」と相談を受けました。
預かったのは、純白の洋カップ。
わずかな欠けでしたが、修復跡が金色に光れば、かえって「金継ぎした」と目立ってしまう。

そこで私は発想を変えました。
――“直したことを隠す”のではなく、
最初からそのデザインだったように見せる金継ぎを。

モミジの図案はすべて私の創作です。
金で三か所にモミジを配し、欠けた部分の修復線が
まるでモミジの一葉として自然に溶け込むように構成しました。

描くだけでは平板に感じたので、
高蒔絵(たかまきえ)風の立体構造を採用。
光の角度によって葉脈が浮かび上がり、
器全体が穏やかな金の呼吸をしているように見えます。

使用した素材は、本漆・砥の粉・純金粉のみ。
現代的な代用品や樹脂は一切使わず、
伝統の技法で静かに再生させました。

欠けを「傷」とせず、「意匠」として昇華する――
これが、私の考える金継ぎです。

金のモミジがあしらわれた純白のカップ / White cup with gold maple leaf design
Invisible Kintsugi
Designed to make the repair itself disappear — A chipped edge reborn as part of the gold maple pattern.
🍂 直す、ではなく、仕立て直す:
金継ぎは本来、傷を“見せる”文化です。
しかし今回の作品は逆に、「見えない美」を追求しました。
欠けは、デザインの一部として新たな命を得る。
修復の痕跡を消すのではなく、
その痕跡ごと作品として再構成する――。
それは、**創造と再生のあいだ**にある美の実験でした。

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